IB生の「生の情報」IB経験しての後輩へのアドバイス
II. 「IB生のための大学出願」
3. IB生のための日本の大学受験
日本の大学受験まず初めに、文系の学部と理系の学部を志望する人では、IBや推薦入試の実施状況が異なる可能性があることから、筆者が文系の学部を志望していたことを念頭に置いて、以下の文章を読んでいただきたいと思います。
バイリンガルコースで国内大学を考えている生徒の多くは一般入試以外の方式を利用しています。IB入試だけに着目すると、選択肢が限られていると感じるかもしれませんが、以前に比べ、現在の日本の大学の入試方式は多様になりました。IB入試以外にも総合型選抜や推薦入試が導入され、一般入試ではない入試方法(以後推薦入試と呼ぶ)が受験に占める割合が多くなりました。また、私立大学に限らず、国公立大学も推薦入試を取り入れているので、選択肢の幅が広がっています。
受験形式の選択 一言で推薦入試といっても、大学によって形態は違います。ただ、基本的には志望理由書や活動報告書、IBにおける学びをまとめた書類、語学力証明のための書類などを提出する書類審査に加えて、面接を行います。ただし、それに加えて、小論文試験や、プレゼンテーション試験、口頭試問を受ける必要がある大学や、大学入学共通テストの受験を要求する大学もあり、様々な側面から志望者の能力が図られます。
大学の入試方式が多様になっていることは、自分の力を最大限に発揮できる入試方式を選べるということです。同じ大学でもIB利用の有無を選択できる場合もあります。全ての大学にあるとは限りませんが、IBを利用しなくても、IBのカリキュラムの中で培った力を生かすことができる入試方式もあります。IBのテストに自信が持てない人は、IBを利用せずに受験することもできるのかを調べてみましょう。その際に、専願のみ受け付けているのか、併願も可能なのかも忘れずに確認しましょう。また、異なる受験形式を調べる中で、自分が求められている受験要件に当てはまるのか迷った場合は、先生に聞きましょう。方式によって倍率が変わることもあるので、志望している大学が行っている入試の中で、自分がどの方式の出願資格を持っているのか、そしてその中でどの方式が自分にとって有利なのかを見極めるためにしっかり調べる必要があります。
調べる上で、前年度の募集要項を参照したり、入試データなどを見ることも重要ですが、それに加えて、志望する大学のオープンキャンパスや大学説明会にできる限り参加することも大切です。推薦入試を導入する大学が増えたとはいえ、一般入試に比べると情報はまだまだ出回っておらず、インターネットなどで簡単に情報を得ることができません。それ故、担任の先生や大学入試を担当している方に積極的に聞き、情報を入手しましょう。入試の情報は公にされていないところもあるため、聞くことを躊躇してしまう気持ちもわかりますが、聞く前から諦める必要は全くありません。答えられない質問は相手から答えられない、と断られるので、思い切って聞き、「あの時に聞いておけばよかった...」と後悔することがないようにしましょう。
書類審査(志望理由書、活動報告書、語学力証明のための書類) 志望理由書や活動報告書など、自分と志望する大学や学部との関連性をアピールすることが求められる文章を上手く書くためには、自分がどのような人物であるかを理解し、大学でどのようなことを学ぶことができ、大学がどのような人物を求めているのかを知る必要があります。
- 自己分析
自分自身を理解することは難しく、全てを知ることは不可能です。ただ、学ぶことや人と議論すること、新たな経験を積むことは自分を知る手段となり得ます。例えば、日々の学習のなかで、学習における自分の得手不得手を知ることができます。また、IBの授業で頻繁に行われるディスカッションでは、自分の考え方の傾向であったり、グループの中で自分にあった役回りを見つけることができます。学校だけでなく、新たな人と出会い、普段とは違う環境の中で挑戦をする機会がある課外活動に参加することでも、新たな自分を発見することができます。課外活動には多様な背景を持ち、ユニークな視点を持った人々が集まっています。それ故、課外活動の参加者と意見を交わすことにより、学校生活でクラスメートと議論するだけでは得ることができない、考え方や視点を学ぶことができます。加えて、自分が大学で学びたい分野に関連する活動に参加することで、その分野のプロの方のお話を聞くこともでき、将来像を明確化することもできます。このように、学校ではない環境に身を置き、学ぶことは貴重な経験になりますが、手当たり次第に参加するだけでは、自分を理解することができず、学びも深めることができません。学校外での経験を自分の学びにするためには、自分の将来像に関連する活動を行わなければなりません。課外活動に参加する前に自分が活動を通して得たい力や他の活動との関連性を明確にし、活動に参加するようにしましょう。また、活動が終了したら、早い内に学びや気づきを記録するようにしましょう。まとめて書くこともできますが、忘れてしまったものを思い出すのは多くの労力を伴うので、とても大変です。 - 大学分析
大学で学べることをよく知るためには、大学のホームページを見ることに限らず、その大学に通う学生のインタビューを読んだり、オープンキャンパスで模擬講義を受けることが重要です。学生インタビューでは、学生がどのように学びを深めているかが理解でき、模擬講義では、教授と生徒の関係性や授業の雰囲気を知ることができます。その上、大学のシラバスを参照すると、開講されている授業の内容と授業形態が分かり、自分が学びたい分野と照らし合わせることができます。
自分が学びたいことと大学で学べることが合致していても、受験者が大学が求める人物像と合わなければ、大学に合格することができません。従って、志望理由書などの書類に取り掛かる前に志望する大学の理念と方針を必ず確認し、書類には、その理念と方針を理解していること、自分が大学が求める人物像と合っていることをアピールできるような文章を書くようにしましょう。 - 語学力証明のための対策
英語の検定試験はなるべく高い点数を目指しましょう。最低でもCEFR B2 以上の語学力を持っておくと良いでしょう。英語の試験などの有効期限が2年のものがあるので、高校2年生の時点でB2以上の力を証明できるような試験結果を保有できるようにすると、受験前の不安を一つ減らすことができます。
大学によっては面接を行わず、書類だけで合否が決まってしまうところもあります。そのため、提出する書類は、躊躇せずに何度も先生に添削をお願いしてください。
面接
面接では、書類について深く聞かれたり、志望する分野の関心の高さについてみられます。課題図書がある場合には、課題図書に対する自分の意見を聞かれることもあります。提出した書類の曖昧な点や矛盾点は必ず聞かれるので、クラスメートや先生など、色々な人に書類に目を通してもらい、気になる点を指摘してもらいましょう。時事問題について聞かれる場合もあるため、積極的に新聞を読むことや、ニュースを見て情報を頭に入れ、自分の意見をまとめておくと良いです。特に、自分が大学で学びたい分野と関連するニュースはしっかりと理解しておきましょう。
面接の練習は何度でも行いましょう。練習を重ねれば重ねるほど、自分が対策できる質問の量も増え、多くのアドバイスをしてもらうことができます。また、面接はありのままの自分で、素直に答えることが鍵です。取り繕いはすぐにバレてしまいます。面接官の意見に賛成しなくても、問題ありません。しっかりと根拠を持って自分の意見を述べることができるのであれば、自分の意見を伝えましょう。
小論文
小論文試験では、文章力があった方が絶対的に有利になることが多いです。なぜなら、思考を文章化する力に長けていれば、その分だけ、考えることに時間を割くことができるからです。小論文において必要な文章力はIBの授業を通して養うことができると思いますが、自分の文章の癖を把握し、その癖が文章を分かりにくくしてしまっている場合は、日頃から直すように心がけましょう。
出願手続き
基本的なことかもしれませんが、消印有効なのか、期間内に必着なのか、簡易書留なのかなど、出願期間、出願方法などをくまなくチェックすることも非常に重要です。インターネットでは提出不可能な大学もあるため、提出書類の郵送に必要な期間も考慮して余裕を持って提出しましょう。
最後に、少し聞こえが悪いかもしれませんが、サポートしてくれる人の力は積極的に使っていくようにしましょう。受験の最中は、八方塞がりに感じてしまう時もありますが、周りの人に頼ることで、自分の気持ちが軽くなったり、合格への新たな道筋を見つけることもできます。周りの人への感謝を忘れずに、周りの人を頼りながら、受験を乗り切りましょう!